生活保護vs最低賃金。どちらが得なのか?
私と生活保護
私は生活保護を受給して1年が過ぎた。まともな就労をした経験がなく、精神障害者手帳も持っていたため保護の決定は比較的簡単に下りた気がする。
大学で勉強しているときは、まさか私自身が生活保護を受給するようになるとは考えてもいなかった。本当に次のような気持ちだったのかもしれない。
社会的弱者になって、ようやく社会に守られているとか、社会に守ってもらわないと生きていけないこともある、ということを知った。
生活保護は日本国憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」のいわゆる生存権の理念に基づいている。
詳しく知らない人もいると思うが、問題となった神奈川県小田原市の「保護のしおり」がわかりやすい。
https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000488808.pdf
生活保護の実態
被保護実人員は2,090,578人となり、対前年同月と比べると、26,234人減少。
被保護世帯は1,636,334世帯となり、対前年同月と比べると、3,446世帯減少。*2
また生活保護世帯が増加しているような報道が多いが、実はそうではない。
生活保護受給者数は約214万人。平成27年3月をピークに減少に転じた。
生活保護受給世帯数は約164万世帯。高齢者世帯の増加により、世帯全体は増加しているが、高齢者世帯以外の世帯については減少傾向が続いている。*3
とあり、今も減少傾向である。
ただ、高齢者世帯の伸び率が多いため、医療費(医療扶助)が増加し生活保護費自体は増加傾向にあるのかもしれない。今後注視していく必要がある。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2018/01/dl/tp0115-s01-01-03.pdf
生活保護と最低賃金
よく最低賃金で働く人よりも豊かに暮らせるのではないかと指摘されるが、その通りだと思っている。以下、単身者に限り都会(東京都大田区)と地方都市(鹿児島県鹿児島市)でざっくり計算してみた。
最低賃金
現在(平成30年10月1日)の最低時給は鹿児島の761円であり、全国最高の東京都で985円。それぞれ1日8時間、月20日労働した場合
鹿児島県:121,760円/月(年収:1,461,120円)
東京都23区:157,600円/月(年収:1,891,200円)
アルバイト生活者等は国民健康保険料*4、住民税*5、所得税など*6*7がかかってくるので少し計算してみたい(一人暮らしの水道代を3,000円として、東京都では生活保護者の水道代が無料のため引いてある)。
鹿児島県鹿児島市(所得額811,120円):年収1,461,120円-(県民税51,000円+国民健康保険料97,000円+所得税40,566円+NHK受信料14,545円)=1,258,009円
東京都大田区(所得額1,141,600円):年収1,891,200円-(都民税83,500円+国民健康保険料129,163円+57,080円+NHK受信料14,545円+水道代36,000円)=1,585,457円
生活保護費
年収としては冬季加算(2,800円x5ヶ月)*9、期末一時扶助費(2級地鹿児島県鹿児島市4,520円、1級地東京都大田区4,970円)*10を足してある。
鹿児島県鹿児島市:102,840円/月(生活扶助71,240円+住宅扶助31,600円、年収:1,252,600円)
東京都23区:131,640円/月(生活扶助77,940円+住宅扶助53,700円、年収:1,598,650円)
ただ生活保護受給中であると医療費(医療扶助)もかかりません。また生活保護者は収入があっても15,000円までは全額控除(勤労控除)されるので、月に2度程度働ければ年間18万円の収入アップが見込める。
どちらが豊かに暮らせるのか
計算してみると(計算があっていればだが)、年間に使用できる金額は最低賃金で働いている人も生活保護受給者も変わらない。東京都大田区に関して言えばむしろ高いという結果となった。他にも考慮する項目もあるが、世間の負い目を感じなければ医療費も無料である生活保護の方が金銭面や健康的な不安面は無く、豊かに暮らせる。東京都は更に都営交通の無料乗車券も貰えるし、制度を使い倒すと場所によっては生活保護受給者の方が明らかに豊かに暮らせる。
これは計算方法によって最低賃金と生活保護の逆転現象は簡単に起こり*11、よく指摘されている点である。ただ段階的に生活保護費が減らされる現状もあり、生活保護受給者が全国で不服申立ても行われている。*12
近年生活保護が削減される一方で最低賃金は3%程度引き上げられてきた。
政府のこれまでの目標は最低賃金を毎年3%程度引き上げ、将来的に全国平均1000円を達成するというものだった。最低賃金は2016年から3年連続で3%程度の引き上げが続き、18年には全国平均で時給874円に。*13
本当に良い施策だと思うし、最低賃金は引続き上げていって欲しい(連動して生活保護削減が止まるのではとも思っている)。
ただ困っている人が多い世の中であるので、生活保護の需給がもっと簡単に認められる世の中になることを願うばかりである。
最後に話題になったひろゆきさんの生活保護に関するリンクを貼って終わりにする。
*2:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2019/dl/03-01.pdf
*3: https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000164401.pdf
*4:鹿児島市の国民健康保険を自動計算しよう【平成31年(令和1年)度対応】任意継続との比較もできる!令和元年度 国民健康保険料の試算 大田区
*5:住民税の税額を自動計算できるサイト!全国1741市区町村の平成31年(令和1年)度料率に対応!
*6:所得の計算のしかた | 特定公共賃貸住宅 | 府営住宅 | 大阪府住宅供給公社
*8:生活保護 金額 自動計算 - 布施弘幸 行政書士事務所
*9:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/26102103_6.pdf
*10:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000196724.pdf
*11:http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/663-01.pdf
*12:これ以上の減額は無理 全国で6000人超が不服申し立て また!?昨年10月から生活保護引き下げ – 全日本民医連