「この地獄を生きるのだ」小林エリコ著 を読んで。実家で苦しくなった時、生活保護を活用してまず逃げよう。
精神障害者で生活保護受給者が社会に復帰するまで書いてある本は少ない。
この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。
- 作者: 小林エリコ
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2017/12/07
- メディア: Kindle版
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この本は著者が就職氷河期の中、短大を出て月給12万、残業代・ボーナス・社会保障ゼロという超ブラック企業でエロ漫画雑誌の編集をする。ハードワークでうつ病になり、自殺未遂。精神科通院、実家を出て生活保護を取得する。悪徳デイケアでの葛藤、そしてNPO職員(地域精神保健福祉機構COMHBO)として働くまでを描いている。
著者はあさイチに出演されたり、noteのフォロワーランキング15位(2019.7.30現在)*1と精神障害者界隈では有名な方だ。
2010年前後の体験談であるが、生活保護の悪しき実態を知らない方は一度読んでみると面白いと思う。
私も精神障害を患い生活保護を受給している身としては、著者のことを本当に尊敬した。
実家暮らしからの脱出
読んだ感想からはズレるのだが、著者が生活保護を受給した経緯が興味深かった。
お金がない中でどのように実家を脱出して生活保護を取るのかというのは非常に難しい問題だが、著者は経済援助を受けて実家を脱出した。
そして初めから生活保護費で支給される家賃以下のところで物件を探して暮らし始めている。
そして父親の定年退職後は仕送りが止まり、そのまま生活保護を受けることとなった。
(※クリニックのスタッフが著者を囲い込む手法の一つであったのだが、積極的に実家から出て生活保護受給を推奨していたように思えた。)
障害を抱えていて実家で暮らしても病気が改善されないこともあるし、親といることによって病状自体が安定しないこともあるだろう。
しかし、実家を出ようにも自分自身や親にもお金がなかったり、親にひきこもり施設に強制的に入れられてしまうケースもある。*2
生活保護は申請時に本人にお金がなく(だいたい5万円以下)、単身世帯、親族が援助することができないといえば、生活保護受給は可能だ。
住居さえ決まっていれば、その後の生活保護の申請は比較的簡単である。
積極的に推奨するわけではないが、実家から出たいのであれば家を出れば良いと思う。支援しないと言われたら生活保護を受給できるから、8050問題で疲弊して家庭内外で殺人を犯す前にどこかに相談するべきだろう。
次のPOSSEのQ&Aがまとまっているので読むといいだろう。
生活保護を受給していても京アニの事件のようなことが起こってしまうのは、ケースワーカー含めて周りの支援が足りず、地域で孤立してしまったためであると考えられる。
生活保護受給者はどんどん死んでいっているのだ。
生活保護のことに少し興味が湧いた人は、著者の次の連載を読んでみることをおすすめする。
心の病気と貧困…苦しみの連鎖を抜け出すには――小林エリコさんに聞く(上) : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
精神科医療と生活保護の日々…「働きたい」願いかなわず――小林エリコさんに聞く(中) : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
病気でも社会とかかわりたい…生活保護「自力で抜け出した!」――小林エリコさんに聞く(下) : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
おわり