厚生労働省は生活保護受給者の自殺者数調査をやめた
タイトルのままであるが、厚生労働省は平成25年の調査を最後に生活保護受給者の自殺者数の調査をやめた。
下図は平成27年3月9日に実施された社会・援護局関係主管課長会議資料のデータである。*1
どの年においても生活保護受給者の自殺率は全国平均よりも2.26倍以上高く、平成24−25年では2.69倍である。調査データは他にもあるのだが、平成23年以降は公開されていない。
そこで平成23年、厚生労働省・援護局保護課第4回社会保障審議会生活保護基準部会の「生活保護受給者の自殺者数について」の年齢別被保護自殺者数を見てみたい。*2
厚生労働省の見解としては、
60歳代が全体の23.4%(累計)を占め、次いで50歳代(22.5%)、40歳代(18.6%)の順となっており、この傾向は3年間ほぼ変わらない。 また、警察庁発表の全国の自殺者の傾向と比較しても、年齢階級別の順位はほぼ同じである。
としている。しかし、各年齢の生活保護受給者の自殺率は60代以下で圧倒的に高い。
次に年齢別被保護率自殺率を見てみよう。
自殺者のうち精神疾患を有する者が多く、その割合は3年間で1936人(66%)である。
被保護者数に占める精神疾患及び精神障害を有する者の割合は15.0%であるのに対し、全人口に占める推定精神疾患患者の割合は2.5%となっている。
全国の自殺者の数の中にどれだけ精神疾患を有するものがいるかわからないが、この割合は異常に高い。
厚生労働省は生活保護受給者の自殺防止対策として、「継続して調査を実施し、平成24年以降は生活保護業務データシステムの調査事項に登録し、統計数値として管理することを検討する」としていたのだ。
しかし、平成25年以降調査実施がされなかった理由を厚生労働省に電話で確認したところ、福祉事務所の精神的負担が大きいためであるとのことだった。
他のデータを出さずに、検討・調査した結果を何も示さずに終わったのは疑問が残る。
まぁ生活保護受給者が死ねば、ケースワーカーの抱えているケースが一つ少なくなり、負担が減る。税金の投入が少なくなる。いいことだらけなんだろう。
平成24年から自殺率が全国平均よりも2.69倍と上昇していた社会的な背景としては、平成24年にお笑い芸人の河本準一さんに端を発した「芸能人親族生活保護受給騒動」も関係しているように考えられる。*3
毎日のようにワイドショーで取り上げられていたし、精神的に病んでいたら死にたくなる気がする。
そして今日も精神障害者は一人で死んでいっているのだろう。
社会的な弱者を切り捨てていく風潮は続く。
悲しい世界だ。
もやもやするが、今回はこのあたりで終えたい。
#健康で文化的な最低限度の生活
— サナギ (@sanagi3r4) July 17, 2018
担当ケースの自死で呆然とする主人公が先輩から「1ケース減って良かった」と励まされ、一度は納得しかけるものの「それを言ったら大切なものを失ってしまう」と思い直すシーン。
「いのち」が見えなくなってしまうこと。
これが生活保護行政の問題点だと思う。
さっきの「他の生活保護の方にお金が回せるし、ケースが減って良かった」みたいなセリフは、やっぱり凄い。言葉の威力が凄い。
— なな (@fishstory73) July 17, 2018
心の片隅にあるような言葉をむき出しにして、出演者に言わせるのが凄いというか、なんだか怖いと思ってしまった。
セリフがずしんと響く。#健康で文化的な最低限度の生活